工場設計について

生産施設の建設プロジェクトでは機能とコスト、そしてスケジュールが特に重要です。そのことを踏まえた上で働くひとにとって快適で美しい建築を目指します。

【スケジュール】
設計工程、申請工程、建物建設工程、生産設備据付及び試運転工程等を踏まえたエンジニアリングスケジュールの作成が必要となります。解体工事を伴う場合はインフラの盛り替え工事工程も鍵となります。

【配置計画】
法的、物理的制約条件を考慮して施設規模・将来計画、物流動線、人動線といった個別要件に対しての最適レイアウトを導き出します。
1)法的制約条件
・建ぺい率
敷地面積に対する建物の投影面積(建坪)の割合。
Ex)5,000㎡の敷地で建ぺい率60%の場合
5,000×0.6=3,000㎡: 30m×100mの建物建設が可能となります。
※屋外階段及び1m差し引いた庇の面積もカウントされます。
※緑地や構内道路、駐車スペースを考慮すると一般的には建ぺい率いっぱいまで建設するのは難しいでしょう。

・容積率
敷地面積に対する建物の床面積合計の割合。
Ex)5,000㎡の敷地で容積率200%の場合
5,000×2=10,000㎡: 30m×100m×3階+20m×25m×2階、または 30m×50m×6階+10m×25m×4階の建物建設が可能となります。
※資材置場や荷捌きスペースとして使われる庇下の面積もカウントされます。

・緑地率
工場立地法と各自治体が定める基準の両方を満たさなければなりません。もともと工場立地法では、20%の緑地面積率、25%の環境施設率(緑地を含む)を規定していましたが、1997年の改定により各自治体条例により強化、緩和できるようになりました。
Ex)大阪府堺市の工業専用地域5,000の敷地に工場を建設する場合、
a)工場立地法上の緑地面積率:10%、環境施設率:15% → 5,000×15%=750㎡
b)堺市開発指導基準:(5+10C/9,000)%以上、Cが9,000平方メートル以上の場合15%以上、
Cは敷地面積 → 5+10×5,000/9,000=10.56% 5,000×10.56%=528㎡
つまり、より厳しい方の750㎡以上の緑地面積を確保する必要があります。
※実際は、駐車場の緑化ブロック、屋上緑化、壁面緑化をカウントできるかどうか、沿道緑化の緩和規定があるか、高木・中木・低木・地覆類の樹種規定があるか等詳細基準を確認する必要があります。

・生産施設面積率
工場立地法で定められた敷地面積に対する生産施設の投影面積の割合で、業種により30~65%に規定されています。多くの業種が65%に規定されており、建ぺい率を超えているため、実質的に問題となるケースは稀です。
※倉庫棟や事務所棟も生産施設には含まれません。

・駐車台数
各自治体が定めた基準によります。
Ex)大阪府堺市に5,000㎡の工場を建設する場合、
延べ面積200㎡に1台 → 5,000÷200=25台分の駐車スペースが必要となります。

・駐輪台数
各自治体が定めた基準によります。
Ex)大阪府堺市に5,000㎡の工場を建設する場合、
延べ面積200㎡に1台 → 5,000÷200=25台分の駐輪スペースが必要となります。

・セットバック
前面道路幅が4mに満たない場合は境界線からのセットバックが必要です。また、地域協定等で道路境界線からのセットバックを規定している場合があります。実際の基礎施工を考慮すると、条件が厳しくない限り敷地境界線から2.0m程度外壁ラインを控えた方が良いでしょう。

2)物理的制約条件
・敷地形状
もちろん、配置計画の一番の基本条件となります。

・接道条件および出入口位置
物流動線の起点、終点となります。道路幅、右折の可否、使用するトラック・トレーラーのサイズにより、出入口幅と構内道路幅やトラック切りかえし広場等の検討を行います。

・周辺施設状況
隣接建物との関係が採光及び通風に影響します。また、街並み景観、歩行者や自動車からの見え方について検討材料となります。

・地中埋設物
配置によって建屋基礎と地中埋設物との干渉が問題となります。撤去費用を抑える工夫が必要です。

・電柱位置
基本的に電力及び通信の引き込み距離をなるべく短くしてコストを抑えます。

・給排水マンホール位置
引き込み或いはつなぎ込み距離をなるべく短くしてコストを抑えます。

3)実際の個別要件

・施設規模、棟数、将来計画
一般的に複数棟より1棟、工期を分けるより一度で建設する方がコストは安くなります。しかしながら、大規模建屋は光、風環境が悪く、周辺に対して圧迫感のある建物となります。また、複雑な形状とする場合は構造上も雨仕舞上も不利となります。また、無駄なランニングコストがかかる場合もあり、総合的な検討が必要です。

・物流動線(トラックルート)
搬入、搬出をいかに合理的に行うかは工場運営の核とも言えます。トラック及びトレーラーの車輛回転軌跡をもとに構内道路及び建物搬出入口の検討を行います。ある規模以上であれば周回道路を設け、一方通行とするのが効率的かつ安全です。
・人動線
従業員および来客者の動線で、物流動線となるべく交錯しないように安全第一とします。現実的には完全な歩車分離は難しいため、歩行者にとっても、トラック運転手にとって見晴らしをよくすべきだと思います。また、「最短距離を行きたい」という人間心理になるべく適った歩道計画とします。来客者に対してはどのように迎えるかといった演出なども考慮できると良いでしょう。

・駐車台数、駐輪台数
法規上の基準と共に実際の従業員および来客者用必要駐車台数を満たすようにします。
駐車スペース:一台あたり2.5m×5m+通路幅5.5m
駐輪スペース:一台あたり0.6m×1.9m+通路幅1.9m

・付属施設
危険物庫、ごみ集積場、キュービクル、受水槽、防火水槽、浄化槽、排水処理施設といった各付属施設の合理的レイアウト検討を行います。

【平面計画】
工場建築は1つとして同じものはありません。まずは、材料・製品、製造方法、機械設備、クレーン、物流、従業員動線などの生産に関わる状況をていねいに把握することが第一です。そして、様々な要望に対して優先順位をつけ、法規的に適合させながら合理的かつ経済的に計画します。

1)生産関連
・機械レイアウト
工場内レイアウトは作業効率に直接影響を及ぼします。既存工場のレイアウト、作業手順等を綿密に把握してその利点と欠点を洗い出し、計画に活かします。メーカーカタログ等により全ての生産設備の仕様(サイズ、重量、電気容量、ユーティリティ等)を整理し、正確な形状を平面図に落とし込んで作業動線に問題が無いかを検証します。各設備の周囲には操作スペース以外にもメンテナンススペース(60cm以上)を確保します。大きな平面図上で設備をかたどった厚紙ピースを実際に置いてみてレイアウト検討をすると分かりやすいと思います。

・荷捌きスペース
トラック等での搬出入の際の荷捌きスペースを確保します。効率的物流を目指して適正な位置と広さになるように検討します。屋外庇下または屋内に確保するのが通常です。重量物を扱う場合はトラックが屋内まで入ってクレーンで荷卸しすることになります。その場合、更に工場内に車両通路スペース(3m/台)が必要となります。また、シャッター部にはトラックのタイヤが外部の水を持ち込まないようにグレーチング蓋付きの側溝を設けます。

・材料置場/半製品置場/製品置場
各機械設備、荷捌きスペースや搬出入口との関係を考慮して材料、半製品、製品のストックエリアを設けます。作業動線を短くするように検討すると共に、在庫が増えすぎないように適正面積に抑える努力をします。空間効率を高めて固定、移動、または自動ラックシステムを採用する場合もありますが、自動化がかえって効率を低下させることもあります。製造工程とタイムリーな関係が薄い場合は、別棟倉庫を設けた方が良いかもしれません。

・安全通路
工場内での事故を防ぐためにも明確な安全通路を設けるべきだと思います。作業効率や面積効率をなるべく損なわないように計画します。ひと一人分であれば60cm幅、すれ違えるためには120cm幅が必要です。

・クレーン
クレーンの走行範囲に対して物流動線や機械レイアウトが整合しているかを確認します。実際の吊フックは、壁や柱面からかなり内側までしか届かないので平面的限界範囲の把握が必要です。大小複数台のクレーンを設置する場合、走行スピードの遅い大型クレーンが小型クレーンの作業を妨げる可能性があります。また、3t以上のクレーンは点検ステージ及びタラップの設置が必要です。

・配管・配線ルート
生産用の配管及び配線、建築用の配管及び配線ルートをそれぞれどうするのが最も合理的かを検討します。これにより、PS/EPSの位置や床ピットの有無等が確定します。基本的には生産用を優先すべきですが、設計段階で生産設備が確定していないことが多く、建設の最終段階まで調整が必要です。ただし、工程に影響しないように各段階で細かくスケジュール管理を行う必要があります。

2)法規
・防火区画
基本的に最大1500㎡ごとに防火区画壁で仕切らなければなりません。「クレーンが走行する」、「製造ラインが連続する」といった理由で場合によって防火区画の免除が可能です。ただし、その場合は免除を適用したエリアと他のエリアを区画する必要があります。防火区画壁の面積をなるべく少なくすることがコストダウンにも繋がります。

3)その他
・電気室
キュービクルを屋内設置する場合、電気室を設けることになります。各エリアへの供給ルートを考慮すると建物の端より中央に近い方が合理的配置です。電気室の上部にはなるべく便所などの水回りや給排水配管を設置しないようにします。万一の漏水事故を考慮してキュービクル基礎は他の床より10cm程度高くします。

・コンプレッサー室
排熱を考慮してコンプレッサーは外壁に面した独立室に設置した方が良いでしょう。また、騒音対策(遮音/吸音)も必要です。

・便所/手洗い
工場内従業員のために歩行距離が長くなり過ぎない位置に設けます。

・休憩エリア/喫煙エリア
随時休憩できるちょっとしたスペースがあると便利です。

・見学通路
外来者を案内するルートについても安全及び演出を考慮して予め計画しておくと良いと思います。

・事務エリア
事務室・会議室・更衣室・食堂・休憩室・洗濯室・シャワー室・倉庫等を必要に応じて設けます。工場建物内に設ける場合、生産設備やクレーンの振動や騒音を考慮する必要があります。


【断面計画】
空間ボリュームが大きければ大きいほど、イニシャルコストもランニングコストも増大します。生産設備形状、クレーン楊程等を厳密に把握して必要最小限の高さに抑えます。場所によって必要高さが異なる場合は、検討を要します。必要高さに合わせて屋根高さを微妙に変えると、空間ボリュームは減りますが、外壁・屋根・樋の工事費が増える可能性があります。また、複雑な形状は雨仕舞や断熱性能にとっても不利で、外観にも大きく影響します。

・クレーン
クレーンの揚程(床面から吊フックまでの高さの最大値)がまず高さを決める基準となります。法規上クレーン最頂部から400㎜以上のクリアをとって建築限界とします。通常そこが大梁下端となりますが、プレートやボルト、天井吊下げ照明や配管を考慮して500㎜以上のクリアをとります。天井クレーンは上階へ振動・騒音をダイレクトに伝達してしまうので検討が必要です。

・シャッター
シャッターH寸法も高さを決める基準となります。大型トラックを考慮して4m前後とする場合が多です。また、シャッター開口が機械設備の搬出入に問題が無いかもチェックします。開口部の上に高さ70㎝程度のシャッターボックスが取りつきます。その上にクレーンガーダー鉄骨があり、更にその上にクレーンが設置されることになります。これらの関係から建物高さを設定していきます。鋼製シャッターの内側に高速シートシャッターを設ける場合は、シャッターボックスが上下2段設置となるので注意が必要です。鋼製シャッターは上げ下ろしに時間がかかるので高速シートシャッターは非常に便利です。

・機械設備
作業性、設備とクレーンとの干渉をチェックします。場合によっては、ピットを掘って床面より低い位置に機械を設置します。

・その他
同時に電気・ガス・水・エアー等のインフラルート、排気ダクト、空調設備、採光窓、有圧扇、照明器具の位置などを合わせて検討します。


【立面計画】
平面及び断面を検討する際、常に立面上どうなるかを考慮しながら進めます。退屈な大壁面が周囲へ圧迫感を与えることは避けるべきですが、無意味な細かい装飾は不自然となります。全体プロポーションや建具配置を整えることを基本に、周辺景観との関係を考慮しつつ、適度な個性を表出できると良いのではないでしょうか。また、植栽計画も立面を形成する重要な要素です。


【構造計画】
クリーンルーム等は別として、工場建築は一般建築とは異なり、内装仕上げがなく躯体が露出する場合が多くなります。そこでコスト的にも、収まりの美しさに関しても構造設計が極めて重要です。

・柱スパン/柱ピッチ
柱と柱の間隔のことで、全ての計画の基本となります。
一般的に梁間方向は工場の必要に合わせて決定し、桁行方向は経済性を考慮しながら出入口や機械レイアウトとの整合性をとって計画します。スパンを大きくとると鉄骨サイズが大きくなりますが、基礎が減ります。特に杭が必要な場合は、柱本数を減らす方がコストダウンとなる傾向があります。また、スパンを大きくすればする程クレーンの値段も高くなります。スパン25mを超える辺りからクレーンの値段が極端に高額となる可能性があります。

・鉄骨
ボックス柱を使用して両方向ラーメン構造とすると、プラン上の制約がなく見た目もすっきりした空間を実現できます。しかしながら、コストを考慮するとH型鋼柱を使用して桁行方向ブレース構造とするのが一般的です。特に重層建築では、座屈拘束ブレースといった特殊ブレースが有効です。
20mを超えるスパンでは、トラス梁の方が鉄骨重量を削減できてコスト的に有利かもしれません。ただし、トラスを組むと梁背が大きくなり、建物高さが高くなるので総合的判断が必要です。方杖を設けて小梁サイズを落とすと、鉄骨重量を大きく減らせる可能性があります。
鉄骨梁に配線や配管用のスリーブ(開口)を設け、空間を最大限有効に使う工夫を行うことも可能です。
鉄骨に後から熱を加えると耐力に影響を与える可能性がありますので、基本的に設備用の支持材を本体鉄骨に現場で直接溶接すべきではありません。必要であれば、工場で捨てプレートを溶接しておくと良いでしょう。

・床
一階の工場床としては以下の仕様が考えられます。
① コンクリートスラブ
② 土間コンクリート
③ アスファルト舗装
④ 砕石敷き
最も一般的な床は②土間コンクリートですが、軟弱地盤や積載荷重が大きい場合には将来沈下の可能性が高くなります。最も確実なのは①スラブコンクリートですが、杭が必要な場合は特に高額となります。精度が要求される機械基礎のみ確実な沈下対策を行うのが現実的でしょう。逆に重量物を扱う工場では、例えば材料置場を、将来沈下を前提として補修工事が比較的容易な③アスファルト舗装や④砕石敷きとします。また、完全ではないにしても沈下対策として床下の土にセメントを混ぜて地盤改良を行うことも有効です。また、土間コンクリート上にはカッター目地を設けてクラックの拡大を防ぎます。


REFERENCE WORKS

  1. 輝文生物上海工場事務所棟 工場・事務所・研究開発センター, 2016年11月
  2. 輝文生物上海工場Ⅱ期 工場・事務所・研究開発センター, 未定
  3. タツタ電線大阪工場事務所棟 計画案 工場・事務所・研究開発センター, 2015年
  4. Apache開発センター 工場・事務所・研究開発センター, 2006年11月
  5. 伽藍集団 上海工場二期、三期 工場・事務所・研究開発センター, 未定
  6. KUNKI軍輝 東莞工場 工場・事務所・研究開発センター, 2007年4月
  7. CIMC海洋エンジニアリング R&Dセンター コンペ案 工場・事務所・研究開発センター, 2009年